積立を減らしたいとき、「これから入れるお金を止める」のか、「既に積み立てたお金を使う」のかで、必要な手続きが違います。NISAは商品を売って現金化できますが、iDeCoは原則として60歳になるまで引き出せません。
同じ積立でも、NISAは投資の非課税制度、iDeCoは老後の年金制度です。急な支出に備えるお金までiDeCoへ入れてしまう前に、この違いを押さえましょう。

目次 +
積立停止と、資産の引き出しは別の手続き
| したいこと | NISA | iDeCo |
|---|---|---|
| 今後の積立を止めたい | 金融機関で積立設定を変更・解除する | 掛金停止の届出をして、運用だけを続ける立場へ変更する |
| 既にある資産を現金で受け取りたい | 商品を売却し、受渡し後に出金する | 原則60歳まで引き出せない。受給開始年齢は加入期間などで変わる |
| また積立を始めたい | 年間投資枠などの範囲で設定を再開する | 加入資格を確認し、再び加入する手続きをする |
積立設定を止めても、保有する投資信託などが自動的に売れるわけではありません。反対に、商品を一部売っても積立設定が残っていれば、次の買付けは続きます。「毎月の出費を減らしたい」のか「今あるお金が必要」なのかを先に決めると、操作を選び間違えにくくなります。
NISAは売れるが、必要な日までの余裕を持つ
NISAの資産は売却できます。ただし、投資信託などは注文した瞬間に銀行の現金になるわけではありません。商品ごとに売却価格が決まる日や受渡日があり、その後の出金手続きにも時間がかかります。使う日が決まっているなら、金融機関の画面で入金予定まで確認します。
また、売る時点で値下がりしていれば、積み立てた総額より受取額が少なくなることもあります。直近で必ず使う支払いは、売却時の値動きに頼らず用意しておくことが大切です。
| 確認点 | 2024年からのNISAの扱い |
|---|---|
| いつ戻るか | 売却した翌年以降、非課税保有限度額を再利用できる |
| いくら戻るか | 売却代金ではなく、その商品を買った金額が基準 |
| その年に買い直せるか | 売ってもその年の年間投資枠が追加で復活するわけではない |
「引き出したら枠を永久に失う」わけではありませんが、その年の買付け余力まで元に戻るわけでもありません。売却と再購入を考えるときは、残っている年間投資枠も確認しましょう。
iDeCoは掛金を止めても、老後用の資産として残る
iDeCoの掛金を止める場合、金融機関へ連絡し、掛金を出さずに運用だけを行う「運用指図者」になる手続きをします。口座残高を銀行預金のように引き出せる変更ではありません。掛金を止めた後も資産の運用や管理は続き、口座管理などの手数料も確認が必要です。
再開するときは、その時点の加入資格を確認し、改めて加入者になる手続きをします。口座振替をわざと不能にするのではなく、停止・減額・再開の届出と反映時期を金融機関へ聞きましょう。
原則60歳以降に受け取る制度ですが、60歳時点の通算加入者等期間が短い場合は受給開始が後になります。「60歳の誕生日に誰でも全額受け取れる」と考えず、自分の加入期間と請求方法を確認してください。
途中解約の例外を、生活費の引き出し手段と考えない
iDeCoには障害給付などの給付や、厳しい条件を満たす場合の脱退一時金があります。ただし、単に退職した、収入が減った、まとまった支出があるという理由だけで自由に解約できる制度ではありません。
脱退一時金は、iDeCoに加入できないことなど複数の要件を全て満たす必要があります。自分が該当しそうな場合は公式の要件を確認し、金融機関へ相談します。例外を当てにして、近く使うお金を積み立てないことが大切です。
- 必要なのは毎月の余裕か、まとまった現金かを決める
前者なら積立額・設定の変更、後者なら既存資産の受取可否を調べます。 - 使う日と口座を対応させる
近い支払いは預金などで確保し、NISAは売却・受渡しの日を確認。iDeCoは老後まで使わない資金として考えます。 - 停止後の状態まで確かめる
積立設定、引落し、保有商品、管理手数料を見て、意図した変更になったか確認します。
積立を止めることと、お金を取り出すことを分ける。税制の有利さだけでなく、いつ使える必要があるお金なのかで置き場所を考えると、無理のない積立に戻しやすくなります。
受け取る前に亡くなったら、iDeCoとNISAで手続きが違う
iDeCoは遺族が死亡一時金を請求し、NISAの資産は相続の手続きをします。本人が生前に自由に引き出せるかという話と、亡くなった後に家族が受け取る話は別です。iDeCoを受給前に亡くなっても、積み立てた資産がそのまま消えるわけではありません。
| 確認点 | iDeCo | NISA |
|---|---|---|
| 受け取る方法 | 受給権のある遺族が死亡一時金を裁定請求する | 相続人が資産を引き継ぐ。相続人のNISA口座へは移せず、特定口座・一般口座への移管手続きをする |
| 最初の連絡先 | 加入先の金融機関(運営管理機関)。記録関連運営管理機関と提出先を確認する | NISA口座を開いていた金融機関の相続窓口 |
| 早く確認すること | 受取人指定、請求順位、必要書類。死亡から5年間請求がないと死亡一時金ではなく相続財産の扱いへ変わる | 死亡を知った後、遅滞なく「非課税口座開設者死亡届出書」を提出する |
| 税の基本 | 死亡後3年以内に支給が確定した死亡一時金は相続税の対象。受取人・他の死亡退職金等との合計で非課税枠を確認する | NISAの非課税は所得税の制度。資産は相続税の対象になり得る。相続で引き継いだ後の運用益は課税口座の扱いになる |
iDeCoの遺族は、相続の順位だけで受取人を決めない
死亡一時金の受取人指定があれば、その指定を先に確認します。本人は配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹から指定できます。指定がない場合の順番は、通常の遺産相続とは異なります。
| 順番 | 受取人の範囲 |
|---|---|
| 1 | 配偶者。事実上の婚姻関係にあった人も対象 |
| 2 | 主として本人の収入で生計を維持していた、子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹 |
| 3 | 上の範囲以外で、主として本人の収入で生計を維持していた親族 |
| 4 | 上の2に当たらない、子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹 |
同じ順位に複数人いる場合は等分し、代表者を決める手続きがあります。金融機関へ死亡を連絡したら、死亡一時金裁定請求書と、死亡・続柄・生計維持関係を確認する書類などを案内に従ってそろえ、指定された記録関連運営管理機関へ提出します。審査・支給決定を経て資産が売却され、指定口座へ支払われます。家族が自動的に受け取れる手続きではありません。
死亡から5年がたつまで待ってよい、という意味でもありません。死亡後3年以内に支給が確定するかで税務上の扱いが変わります。相続人が受け取る死亡退職金等の非課税限度額は、他の対象となる死亡退職金等と合わせて「500万円×法定相続人の数」。相続人以外の受取人にはこの非課税の適用がありません。支給確定が3年を超える場合も含め、税務署へ確認しましょう。
NISAは、相続後も非課税のまま残せるわけではない
亡くなった人のNISA資産を、自分のNISAへそのまま引き継ぐことはできません。金融機関へ死亡届を出し、戸籍や遺産分割の書類など、指定された相続書類で手続きを進めます。
相続人の取得価額は、原則として亡くなった日の終値に相当する金額です。その後、課税口座で売却するときは、この取得価額を基に売却損益を計算します。死亡日までのNISA内の値上がり益と、相続後の値上がり益を分けて考えると、非課税がどこまで続くのか分かります。
NISA資産も相続財産に含まれます。相続税がかかるかは他の財産や控除なども合わせて決まるため、「NISAだから相続税もゼロ」とは限りません。生前に金融機関名と口座の所在を家族へ伝えておくと、手続きを始めやすくなります。暗証番号やログイン情報を使って本人の代わりに売却するのではなく、相続窓口へ連絡してください。
出典・確認した範囲
- 国民年金基金連合会:iDeCoの特徴と受給開始
- iDeCo公式:掛金変更・停止と再開の手続き
- iDeCo公式:給付・脱退一時金の全要件
- iDeCo公式:加入・移換時の確認事項と手数料
- 金融庁:NISAの制度と売却後の枠
- JIS&T:死亡一時金の受給者・請求・税務上の扱い
- 国税庁:死亡退職金等の非課税枠と受取人
- 国税庁:NISA死亡時の届出・課税口座への移管(問24)
- 国税庁:相続でNISAから払い出される株式等の取得価額
- 国税庁:相続税の対象と基礎控除
資料確認日:2026年10月21日。2026年10月時点の成人向け制度を扱います。2027年開始予定の未成年者のNISAや今後のiDeCo改正を、現在使える引出し制度として扱っていません。売却の受渡日は保有商品・金融機関で確認します。
この記事の登場人物

美緒29歳
住まいや固定費を見直し、自分の暮らしに合う家計を考える。