奨学金をまとめて返したら、来月から毎月の返還額も軽くなる。そう思って繰上返還を考えているなら、先に確認したい点があります。一部を繰り上げて返すと、基本的に短くなるのは返還期間で、翌月からの返還は通常どおりです。
完済を早めたいのか、いまの毎月の支払いを減らしたいのか。この目的を分けると、繰上返還と負担軽減の制度のどちらを調べるべきかが分かります。

目次 +
一部繰上返還は、毎月の支払いを先に終わらせる仕組み
| したいこと | 先に確認する方法 | 変わるもの |
|---|---|---|
| 完済を早めたい | 一部・全額の繰上返還 | 一部なら返還期間が短縮、全額なら返還が完了 |
| 毎月の支払いを軽くしたい | 減額返還 | 審査により月々の返還額を減らし、返還期間を延ばす |
| しばらく返すのが難しい | 返還期限猶予 | 審査により返還を待ってもらう |
一部繰上返還では、希望する上限金額か回数を選んで申し込みます。金額指定でも、その範囲で繰り上げられる回数に合わせて調整されます。単に好きな金額を口座へ置けば、翌月の返還が自動的に下がる手続きではありません。
まとまった資金を使った後も、翌月以降の通常の返還に対応できるか確認しましょう。家賃の更新や医療費など、既に分かっている支払いまで繰上返還へ回してしまうと、完済は近づいても当面の生活が苦しくなります。
利息が減るのはどの部分か
| 種類 | 利息への影響 | 判断する点 |
|---|---|---|
| 第一種・無利子 | もともと利息がない | 完済を早める価値と、手元の資金の必要性を比べる |
| 第二種・有利子 | 繰り上げる期間の利子はかからない | 自分の残りの返還と、繰上げ後の額を確認する |
| 第二種の据置期間の利子 | 繰上返還でもかかる部分がある | 将来の利子が全てゼロになると考えず、申込内容を確認する |
第二種では、将来に当たる期間を先に返すことで、その期間の利子を減らせます。ただし、貸与終了後から返還開始までの据置期間の利子は扱いが別です。在学猶予の承認状況でも変わるため、自分の返還情報で金額を確かめます。
全員の利率や残高が同じではないので、「いくら先に返せば必ず何円得」とは決まりません。申込みの画面や通知で、実際に繰り上げる回数・金額・残る返還を確認する方が、判断に使えます。
月額を減らす・返還を待つ・免除は、条件と効果が違う
少ない月額なら返せる場合は減額返還、今は支払い自体が難しい場合は返還期限猶予を確認しましょう。繰上返還へ資金を回す前に、今後の通常返還を続けられるかを見ることが大切です。
| 制度 | 変わること | 主な対象・期間 |
|---|---|---|
| 減額返還 | 月額を3分の2・2分の1・3分の1・4分の1へ減らし、その分返還期間を延ばす。元金や返還予定総額の免除ではない | 災害・傷病・経済困難等。願出・審査時に延滞がないことなどが条件。1回12か月まで、通算15年まで |
| 返還期限猶予(一般猶予) | 承認された期間の返還を先へ延ばす。期間終了の翌月から再開する | 経済困難・失業・傷病・災害等。原則1年ごとの願出、通算10年まで。傷病等、事由によって上限の扱いが異なる |
| 死亡・障害による返還免除 | 審査により返還未済額の全部または一部が免除される | 本人の死亡、または精神・身体の障害で労働能力を失う・高度に制限され、返還できなくなった場合 |
第二種奨学金は、減額返還で期間が延びても利子総額は増えず、猶予期間中も利息は増えません。所得連動返還方式を選んだ第一種では減額返還を使えないため、返還期限猶予など自分の返還方式に合う制度を相談します。減額返還・猶予の適用中は繰上返還ができません。
収入の条件は、手取りではなく税込年収・所得で確かめる
減額返還と猶予では、経済困難の収入基準が異なります。給与の手取り月額を12倍して当てはめず、公式案内が指定する所得証明書等の年間収入・所得で確認します。
| 制度 | 給与所得者 | 給与以外の所得を含む場合 |
|---|---|---|
| 減額返還の目安 | 年間収入400万円以下。扶養する子が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下 | 年間所得300万円以下。扶養する子が2人なら400万円以下、3人以上なら500万円以下 |
| 一般猶予・経済困難の基準 | 年間収入300万円以下 | 年間所得200万円以下 |
年間収入は税込、年間所得は必要経費等を控除後。扶養や医療費等の控除、現在の収入変化などで追加書類による審査があります。減額返還では被扶養者1人につき38万円の控除も案内されています。数値だけで承認を断定せず、事由ごとの公式要件で確認します。
減額返還は口座振替の登録と月賦返還が条件です。既に延滞している場合はそのまま減額返還を申し込めないため、延滞解消や猶予での対応をJASSOへ相談しましょう。失業、卒業直後、病気などは、それぞれの事情に合う申請事由と証明書を選びます。
減額・猶予は、申請画面と証明書をそろえて願い出る
申請しただけで引き落としが止まるわけではありません。審査結果と適用開始月まで確認します。猶予の審査中も口座振替請求等は止められないため、支払いが難しい場合は申請と同時に相談してください。
- 返還方式と状況を確認する:奨学生番号、第一種・第二種、返還方式、延滞の有無を確認。減額なら続けられるか、支払いを待ってもらう必要があるかを整理します。
- オンライン対象かを見る:スカラネット・パーソナルの減額返還・返還期限猶予の願出へ。減額は新卒等・経済困難・失業中、猶予はそれらに生活保護受給中を加えた事由がオンラインの対象です。マイナンバーで必要な情報を確認できること等の条件も見ます。
- 対象外なら所定用紙と証明書を郵送する:公式サイトの願・チェックシートと、所得証明書、雇用保険関係書類、診断書など申請事由に合う資料をそろえます。マイナンバー情報で省略できる証明書と、追加提出が必要な資料を公式案内で確認します。
- 時期・提出先・結果を確認する:オンラインは適用開始を希望する月の3か月前から願出可能。郵送の猶予願は3か月前から前々月末までが案内上の提出時期です。遅れた場合も放置せず相談し、郵送は最新の公式提出先へ。承認後は開始月・終了月・毎月の振替額を確かめ、続ける場合は改めて願い出ます。
死亡や重い障害で返還できないときは、免除の申請を確認する
死亡・障害による免除も、JASSOへの願出と審査が必要です。低収入や失業だけで元金が免除される制度とは異なります。病気の場合は、猶予が合うのか、障害による免除の要件に当たるのかを相談します。
| 事情 | 主な書類・手続き |
|---|---|
| 本人が死亡 | 相続人等が、保証方式に合う貸与奨学金返還免除願を用意。人的保証は相続人・連帯保証人の連署、機関保証は相続人のみ。死亡の事実が分かる戸籍抄本等の公的証明書原本を提出(提出済みマイナンバー情報で省略できる場合あり) |
| 精神・身体の障害 | 貸与奨学金返還免除願、返還できなくなった事情を証明する原本、JASSO所定の診断書等。診断書は病院の封筒に封入・密封し、開封せず提出する |
| 郵送先 | JASSO返還総務課・返還免除係。公式の免除案内にある最新の用紙・記入要領・住所を確認して郵送する。減額・猶予のオンライン画面とは別手続き |
障害による免除は、JASSOが定める等級等の審査で、残額全部または一部の扱いが決まります。障害者手帳があるだけで自動的に全額免除になるわけではありません。所定の診断書を依頼する前に、公式の記入要領と必要書類を確認しましょう。大学院での業績による免除とは別の制度です。
申込み前に、口座と通常返還分を確認する
- 自分の返還情報を見る
第一種・第二種、残りの回数、通常の返還額、近く必要になる支払いを確かめます。 - 実際に使える資金で申込み内容を確認する
スカラネット・パーソナルで金額または回数を確認し、受付期間内に申し込みます。 - 振替口座と当月の金額を確認する
登録済みの口座から振り替えます。通常の返還分も含め、必要な残高を通知で確認します。 - 完了後の予定を見直す
一部なら残る返還予定、全額なら完了のお知らせを確認します。
口座振替による繰上返還に手数料はかかりません。一方、払込取扱票を使う場合は払込手数料がかかります。振替口座を変えている途中なら、新しい口座の登録完了後に申し込むなど、公式の案内に沿って進めます。
機関保証を利用していた場合は、繰上返還で期間を短縮して完了すると、保証料の一部が返る場合があります。返金を先に使えるお金として数えず、保証機関の案内と実際の通知で確認してください。
完済を早めるなら繰上返還、毎月を軽くしたいなら減額・猶予を確認。目的を決めてから手続きを選ぶと、まとまったお金を払ったのに翌月の負担は変わらなかった、という行き違いを防げます。
出典・確認した範囲
- 日本学生支援機構:繰上返還の効果・利子・申込方法
- 日本学生支援機構:繰上返還の手数料
- 日本学生支援機構:減額返還制度
- 日本学生支援機構:返還期限猶予
- JASSO:減額返還の条件・期間・利子
- JASSO:減額返還の収入・所得基準
- JASSO:一般猶予・経済困難の収入基準と証明書
- JASSO:減額返還のオンライン対象と時期
- JASSO:猶予のオンライン対象と時期
- JASSO:猶予の郵送申請・審査中の振替・期間
- JASSO:返還方法と猶予期間中の利息
- JASSO:死亡・障害による返還免除の書類・提出先
資料確認日:2026年10月21日。日本学生支援機構の貸与奨学金を対象にしています。他の奨学金や金融機関の教育ローンは、契約先の条件で確認します。
この記事の登場人物

楓20歳
授業とアルバイトの合間に、教材費や趣味のお金をやりくりする。