父と一緒に通院や買い物の移動を地図で相談する亮太

親の運転を見てひやりとした。「そろそろ返納して」と言いたくても、車がなくなった後の通院や買い物はどうなるのか。親にとっては、安全の話と同時に、自分で出掛ける生活を失う不安でもあります。

返納を説得する前に、車でしている用事を一つずつ洗い出し、代わりの移動を親と実際に試してみましょう。

目次
  1. 何歳で返納している?2025年は70〜74歳の件数が最多
  2. 買い物は、車で出掛けなくても続けられる形を試す
  3. 「危ない」の一言より、気になった場面を共有する
  4. 通院・買い物・楽しみの移動を並べる
  5. 代わりの手段は「ある」から「使える」へ
  6. 話合いが難しいときは、安全運転相談へ
  7. 返納手続きと、その後の身分証を確認する
  8. 出典・確認した条件

何歳で返納している?2025年は70〜74歳の件数が最多

警察庁の2025年の統計を重複しない年齢区分に分けると、自主返納の件数は70〜74歳が最も多くなっています。

2025年の自主返納・年齢区分別件数(全国435,067件)
65歳未満21,737件
65〜69歳38,377件
70〜74歳114,038件
75〜79歳91,893件
80〜84歳100,174件
85歳以上68,848件

警察庁「運転免許統計」の申請による取消しの集計です。公表表の「65歳以上」「70歳以上」などは重なるため、図では隣り合う区分の差から年齢層別に整理しました。免許の一部取消しは含まれません。公表表に平均年齢の記載はなく、この分布から平均を作ってはいません。

返納の多い年齢は、親が安全に運転できる期限を示すものではありません。年齢に加え、実際に心配な運転や体調、車を使わない生活の準備を一緒に考えましょう。

買い物は、車で出掛けなくても続けられる形を試す

重い物は届けてもらい、自分で選びたい物は近所や移動販売で買う。親が使いやすい方法を組み合わせられます。

車での買い出しに代わる選択肢
方法親と試すこと
ネットスーパー親の住所が配達対象かを調べ、食料品や水・米などを実際に注文する。最低注文額・送料・受取時間を確認。親が操作しにくければ、家族が注文を手伝える利用方法や支払方法を確認する。
定期の食品宅配・近隣店の配達注文の締切、届く曜日、電話や注文用紙を使えるかを聞く。食品を入れておく場所や、不在時の受取りも決める。
移動販売・買い物支援自治体の高齢者支援・買い物支援の窓口で、巡回する地域・曜日・停車場所を尋ねる。自宅前まで来るか、停車場所へ歩く必要があるか、商品代以外の負担があるかも確認する。

農林水産省の買物支援の案内では、宅配、移動販売、買物バスなど各地の取組と、自治体が作った配達情報の冊子を探せます。全国どの住所でも同じ方法が使えるわけではないので、まず親の市区町村の案内を調べます。

最初の注文や受取りを一緒に試すと、冷蔵品をしまえるか、重い箱を動かせるか、足りない物を追加で頼めるかが分かります。食品を届けてもらっても、通院や友人に会う足は別に必要です。買い物の配送だけで外出をすべて置き換えようとせず、次の表で移動も確かめましょう。

「危ない」の一言より、気になった場面を共有する

年齢だけで運転能力を決めつけず、見かけた具体的な場面と心配を伝えます。

「駐車でぶつけそうだった」「慣れた道で迷っていた」など、何が起きたのかを落ち着いて話します。本人が困っていることも聞き、家族が一方的にできる・できないを判定する話合いにしないようにします。

安全な運転に不安がある高齢の本人や家族は、都道府県警察の安全運転相談窓口を利用できます。職員が状況に応じて助言し、自主返納や支援施策も案内します。家族の心配を、本人を責める材料ではなく第三者に相談する材料へ変えられます。

通院・買い物・楽しみの移動を並べる

通院だけでなく、友人に会うことや趣味の外出も、代わりの足を考える対象にします。

車を使う用事と、試してみる方法
用事確認すること
通院・薬の受取りバスの停留所からの距離、診察終了時刻の帰り便、タクシー予約
食料品・日用品持ち帰る荷物、配送・宅配の対象地域、注文や受取りの方法
役所・銀行手続きに行く頻度、近い窓口、同行が必要な場面
友人・趣味の外出夜や休日の交通、予定が変わったときの帰り方
急な外出家族が動けない場合の連絡先と、使える交通機関

バスが走っていても、自宅から停留所までの坂や、荷物を持って歩く距離が負担なら、普段使いしにくいことがあります。地図だけで判断せず、親の歩く速さと持ち物で、行き帰りを一度確かめる方が暮らしに合う方法を探せます。

代わりの手段は「ある」から「使える」へ

返納前に、予約・支払い・乗り降りまで一緒に試すと、足りない支援が見つかります。

自治体の交通担当に、路線バスや予約して乗る乗合交通の路線・予約方法を聞きます。高齢者支援の担当には、タクシー助成や移動支援を利用できる条件を尋ねます。登録が必要か、いつ予約するか、運休日、利用できる地域や対象者、料金を見ます。高齢者向けの助成や返納特典は自治体・事業者によって違い、全国一律ではありません。

家族の送迎も、一人がいつでも対応する前提にしないことが大切です。仕事がある日、家族が体調を崩したときも移動できるかを考え、使える方法を重ねます。親が自分で予約できるか、難しければ誰が手伝うかまで話しましょう。

話合いが難しいときは、安全運転相談へ

「返納するかを今日決めよう」ではなく、「運転と移動の困りごとを一緒に相談しよう」と誘えます。

警察の安全運転相談ダイヤルは「#8080」です。発信場所を管轄する都道府県警察の窓口につながり、原則平日の執務時間内、通話料は利用者負担です。離れた地域にいる親の相談なら、親の都道府県警察の窓口へ直接連絡する方法も確認します。

相談内容によって、安全運転を続けるための助言や、本人の状況に応じた制度の案内を受けられます。家族が医療上の状態や運転免許の条件を独断で判断せず、専門の窓口へつなぎましょう。

返納手続きと、その後の身分証を確認する

本人が返納を決めたら、受付場所・必要な物と、運転経歴証明書を申請するかを確認します。

自主返納の方法や、運転経歴証明書の申請条件・手数料は、都道府県警察の公式案内で確かめます。証明書がどのサービスの本人確認に使えるかも、利用先へ確認してください。返納特典があるから生活の移動が全部まかなえる、とは考えず、日常の用事ごとに備えます。

返納後も、行く場所が減っていないか、移動を遠慮していないかを親と確かめます。「車をやめて終わり」ではなく、親が出掛ける暮らしをどう支えるかを話し続けることが大切です。

この記事の登場人物

亮太のイラスト

亮太36歳

毎日の食事と家族で使うお金のバランスを考える。

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