家族の防災備蓄は、買った物の数だけでは足りる日数が分かりません。水があっても、食事を作る燃料や使えるトイレが先に尽きれば、自宅での生活は続けにくくなります。家の安全を確かめ、公的な量を実際の家族へ当てはめ、使える備蓄と支援の受け方までそろえる順番で準備しましょう。

亮太と千尋、陽菜、律が家庭の水・保存食・携帯トイレを並べて確認する
目次
  1. まず、自宅に留まって安全かを確認する
  2. 水・食事・携帯トイレを、1人当たりの量から確認する
  3. 被災した人に役立った備品から、必要な道具を考える
  4. 棚の食品と道具で、実際に食事と衛生を保てるか見る
  5. 3日で支援が届く、1週間で復旧するとは限らない
  6. トイレは流せるかを確認し、使用後の袋まで備える
  7. 備えた道具は、安全に使える状態にしておく
  8. 在宅避難でも、物資や給水の支援を受ける
  9. 出典・数字の範囲

まず、自宅に留まって安全かを確認する

備蓄があっても、建物の損傷、津波や浸水、土砂災害などの危険がある場所には留まれません。自治体のハザードマップと避難情報に従い、安全な場所へ移動します。命を守るために緊急に逃げる「指定緊急避難場所」と、避難生活を送る「指定避難所」は役割が違うので、災害の種類に合う行き先を平時に確認しておきましょう。

在宅避難を選ぶときも、停電や断水の中でトイレ・食事・服薬を続けられるかを見ます。備蓄の日数だけで判断せず、体調や介護、子どもの状態に応じて早めに支援へつなぎます。

家庭の備えを確かめる順番
  1. 家に留まれるかを確認
    危険があれば、備蓄の有無にかかわらず避難する。
  2. 水・食事・トイレを実人数でそろえる
    公式の一人当たり量から必要な量を確かめる。
  3. 実在庫と使える道具を確認
    水や燃料も組み合わせ、先に不足する物を補う。
  4. 支援を受ける経路を確認
    在宅でも登録・連絡先、給水や物資を受け取る方法を調べる。

水・食事・携帯トイレを、1人当たりの量から確認する

食品は最低3日分から1週間分を、実際の家族の人数に合わせて備えることが公的な目安です。地域の災害想定によっては、さらに長い期間が必要です。次の表は公的な目安を1人分にそろえたものです。実際に備える人数へ掛けて使います。

公的な目安と、1人分の3日・7日への換算
品目と1日の基準3日分7日分
飲用・調理用の水:約3L約9L
3L×3日
約21L
3L×7日
食事:1日3食9食分
3食×3日
21食分
3食×7日
携帯トイレ等:成人平均1日5回15回分
5回×3日
35回分
5回×7日

水と食事は農林水産省、トイレは経済産業省が内閣府の広報で示した目安です。水には飲用・調理用を含みますが、洗浄や湯せんなどに使う分は別に見ます。食事は袋の個数ではなく、主食・主菜などを組み合わせて食べられる回数で数えます。トイレの回数も体調や個人差に合わせて増やします。

乳児用のミルクや離乳食、介護食、アレルギーに合う食品、薬、衛生用品などは、実際の家族に必要な物を追加します。水と食料だけそろっていても、トイレや必要な薬がなければ生活は続けにくくなります。

被災した人に役立った備品から、必要な道具を考える

東日本大震災後の仙台市の住民調査では、震災前にそれぞれを備えていた人に、役立ったかを聞いています。明かりや情報、調理する道具も高い割合で役立っていました。

仙台市の震災後調査:備えていた人のうち「役立った」割合
備えていた物役立った割合/回答者数
懐中電灯・ろうそく96.9%/6,117人
ラジオ95.5%/5,297人
カセットコンロ94.2%/4,648人
非常食・飲料水90.9%/4,104人
毛布・寝袋89.8%/2,598人
下着88.8%/2,197人

表は、その備品を備えていた人が役立ったと答えた割合です。今の備えでは、火を使わず照らせるライトと電池、ラジオの電源、使えるコンロと燃料、寒さと衛生への備えを確認する手掛かりになります。

棚の食品と道具で、実際に食事と衛生を保てるか見る

まず、家にある食品を「そのまま食べられる」「水が必要」「加熱が必要」に分け、食べ慣れた主食とおかずで食事にできるか確かめます。冷蔵・冷凍品は停電しても同じ日数保存できるとは限らないので、表示された保存条件も見ます。要冷蔵・要冷凍の食品で適正な保存温度を保てなかった物は、食べずに処分します。水だけ、主食だけが多く残っても、ほかが足りなければ同じ期間は過ごせません。

お湯で戻す食品や温める物を備えるなら、調理用水とコンロ・燃料も一緒に確認します。農林水産省の燃料目安は1人1週間でカセットボンベ約6本ですが、調理方法・使用時間などで変わります。この本数で必ず全食を調理できる保証ではありません。実際の食品の作り方と、使う器具の説明書を確認して、不足する物を買い足しましょう。

普段の食品を少し多めに持ち、期限の近い物から食べて補充するローリングストックなら、味や食べやすさも確かめながら備えられます。水の残量、食べられる食事の回数、トイレの回数と燃料を別々に数え、最も先に不足する物から補います。給水用のふた付き容器もあれば、支援の水を持ち帰れます。

実在庫から、先に不足する物を探す
確認する物数える・確かめること
飲用・調理用の水今ある量と家族に必要な量。給水を持ち帰る容器も用意する
食事そのまま食べられる食事と、水・加熱が必要な食事を分ける
燃料・道具備蓄食品を実際に調理できる組み合わせと、安全な使い方
携帯トイレ・衛生・薬回数分の用品、保管場所、家族ごとの必要品

3日で支援が届く、1週間で復旧するとは限らない

同じ仙台市の調査で、食料や水の不足から生活を維持できないと感じた人は37.3%でした。その2,822人に時期を聞くと、「4日目~1週間」が40.5%で最多です。食料を完全に使い切った人の割合ではありませんが、最初の3日を過ぎても食事や水の確保が課題になると分かります。

能登半島地震の国の検証では、2024年1月2日に県の拠点へ届いたパン3万6,000個が、翌3日に穴水・輪島・能登・珠洲へ配送されています。一方、道路の寸断や渋滞、ヘリの制約があり、避難所で不足した例や、全員分がなく配布を見送った例もありました。県の拠点に届いたことと、自分の家庭が受け取れることは同じではありません。

石川県の復旧資料では、停電解消は2024年3月15日、断水解消は5月31日と整理されていますが、屋内の不具合や復旧困難地区などを除く日付です。5月31日の断水解消には輪島市745戸・珠洲市1,076戸が含まれていません。本管が復旧しても宅内の配管修繕を待つ場合がありました。全家庭がこの日まで断水していた意味でも、全員に数か月分の備蓄を求める意味でもありません。備蓄を使いながら給水・物資配布・購入再開や安全な滞在先につなぐ準備が必要です。

トイレは流せるかを確認し、使用後の袋まで備える

能登半島地震では、断水だけでなく下水道の被害もトイレ不足につながりました。排水設備の復旧や使用可否を確認できるまでは、水が手元にあっても無理に流さず携帯トイレを使います。浴槽の残り湯があれば流してよい、と決めつけないでください。

便袋と凝固剤などが1回分ずつそろっているか、便器への取り付け方、使用後の密閉・保管場所を確認します。廃棄方法と回収の再開は自治体の案内に従います。トイレを節約するために、水や食事を控えないようにしましょう。

備えた道具は、安全に使える状態にしておく

コンロとボンベは対応する組み合わせと正しい接続方法、使用期限やリコールを確認します。大きすぎる鍋などでボンベを過熱させないことも大切です。カセットコンロは使用中に換気し、閉め切った室内やテント内で換気せず長時間使わないでください。使う場所と換気方法は取扱説明書に従います。ボンベは器具から外し、直射日光を避けた40℃未満の屋内で、製品の表示に従って保管します。発電機は室内では絶対に使わず、屋外の風通しがよい場所で、排気が室内へ入らないように使います。

ライトはすぐ取り出せる位置へ置き、電池・充電残量と動作を確認します。家で使う大量の備蓄と、避難時に持って出る袋は分けます。持ち出すのは運べる量の水とすぐ食べられる食品、薬、ライトなど。避難が必要なときに、家の備蓄を全部運ぼうとして出発を遅らせないようにします。

在宅避難でも、物資や給水の支援を受ける

国は、能登半島地震でも在宅・車中泊の避難者を支援対象として周知しています。ただし、自宅へ自動的に物資が届くとは限りません。自治体が指定する避難所や支援拠点への登録・連絡方法、給水や物資の配布場所、情報を確認する手段を平時に調べておきます。

家族の人数と、足りない水・食品・衛生用品、服薬や介護の事情を伝えられるようにします。取りに行けない場合は、自治体や支援拠点へ受け取り方法を相談します。過去の検証に在宅避難者へ渡さなかった例があることも、在宅の人が支援対象でないという意味ではありません。

備蓄が尽きるまで我慢せず、生活を続けにくくなる前に支援へつながることが大切です。断水や停電が長引くときは、給水・配布・買い物の再開を確認し、安全と健康を保てなければ避難所や親族宅など別の滞在先を相談します。まず家の安全、次に使える備蓄、そして支援を受ける経路まで、家族で確かめましょう。

出典・数字の範囲

資料確認日:2026年10月20日。2026年10月21日は保存済み根拠を再利用して構成を見直しました。仙台市調査は2011年11月25日~12月22日、16歳以上の住民を無作為抽出し15,000人へ発送、7,565人が回答、2012年3月公表。備品の割合の分母は品目ごとの備えていた回答者で、人数は表に併記。生活維持が難しいと感じた時期の分母は2,822人です。復旧日は除外条件付きの行政上の整理で、全戸の使用再開日ではありません。必要量の表は公的な1日量×日数の換算。「懐中電灯・ろうそく」は調査の一項目で、LEDライト単体の評価ではありません。

この記事の登場人物

亮太のイラスト

亮太36歳

毎日の食事と家族で使うお金のバランスを考える。

千尋のイラスト

千尋35歳

学校の支払いや備蓄品を、時期を見ながらそろえる。

陽菜のイラスト

陽菜9歳

絵を描くのが好きな小学生。

律のイラスト

律6歳

家族と一緒に台所に立つのが好き。

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