年末の証券取引報告書を見ながら確認事項を書き出す美緒

証券口座を作るときに「特定口座・源泉徴収あり」を選んだなら、毎年必ず確定申告をするわけではありません。ただ、「税金が戻るかも」と任意に申告するときは、税金以外への影響も先に確かめたいところです。

まずはその口座内の取引なら申告不要を選べることを押さえ、別口座との損益通算や損失の繰越を使いたい場合に、申告の要否と影響を確認します。

目次
  1. 「源泉徴収あり」は、口座内の利益の税金を証券会社が扱う
  2. 申告したくなる二つの理由は、損益通算と損失の繰越
  3. 税の還付だけで決めず、国保や扶養への影響を見る
  4. 所得税では申告、住民税では申告不要、という昔の説明に注意
  5. 相談前に、年間取引報告書と「何をしたいか」をそろえる
  6. 出典・確認した範囲

「源泉徴収あり」は、口座内の利益の税金を証券会社が扱う

確定申告が原則不要なのは、その源泉徴収口座内の対象取引についてです。ほかの所得まで申告不要にする制度ではありません。

特定口座は、証券会社等が上場株式や公募投資信託などの取引を計算し、「特定口座年間取引報告書」を作る仕組みです。「源泉徴収あり」なら、口座内の利益に対する税金が差し引かれ、その利益を申告しない選択ができます。

同じ特定口座でも「源泉徴収なし」は扱いが違います。まず口座設定と年間取引報告書を見て、どちらを使っているかを確かめてください。特定口座の対象でない取引や、一般口座での取引、給与以外の所得などは別に判断します。

迷ったときに分けるケース
自分の状況確認すること
源泉徴収ありの口座だけで取引その口座内の対象利益は申告不要を選べる
同じ源泉徴収口座で損失と配当等がある配当等をその口座へ受け入れていれば、口座内で自動的に損益通算できる場合がある
証券会社をまたいで利益と損失がある口座をまたぐ損益通算を使うには確定申告が必要
損失を翌年以降へ繰り越したい所定の申告と、その後も連続した申告が必要
一般口座・貸株金利等もある源泉徴収ありだけでは判断できないため、その所得を別に確認

申告したくなる二つの理由は、損益通算と損失の繰越

口座をまたいで相殺したい、今年の損失を先の年へ持ち越したい場合は、自動処理で済む範囲を超えます。

損益通算は、対象となる利益と損失を相殺して税額を計算することです。別々の証券会社の口座の損益は、証券会社同士が自動でまとめてくれるわけではありません。適用したい場合は、それぞれの年間取引報告書をそろえます。

上場株式等の譲渡損失で、損益通算しても控除しきれない分は、条件を満たす申告により翌年以後3年間の繰越控除ができます。損失が出た年の申告と、その後の連続した申告が必要なので、「損失のある年だけ申告すれば終わり」とは考えません。

NISAでの損失は、税金の計算ではないものとして扱われます。特定口座の利益と相殺したり、NISAの損失を繰り越したりすることはできません。口座の種類を一緒に確認しましょう。

税の還付だけで決めず、国保や扶養への影響を見る

申告不要で扱っていた所得を申告すると、国民健康保険料などの計算に入る場合があります。税金の戻りだけで得だと決めないことが大切です。

横浜市は、源泉徴収口座の株式等の所得を申告しなければ国保の保険料計算等の対象に含めず、申告した場合は損益通算・繰越控除等の適用後の所得を対象に含めると案内しています。税額の還付・減額より保険料の増額が大きくなる場合もあります。

また、税金上の配偶者控除・扶養控除などで使う所得判定に影響する可能性があります。健康保険の被扶養者の認定は、税の扶養とは別の基準です。「申告しなければ健康保険でも必ず収入に数えない」とは考えず、家族の加入先へ、株式等の利益や売却収入をどう扱うか確認します。

所得税では申告、住民税では申告不要、という昔の説明に注意

2024年度の住民税から、上場株式等の対象所得について所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことはできなくなっています。

所得税の申告だけを見て、住民税側ではその所得を外せる前提の古い解説を使わないようにします。横浜市の税制改正案内は、2024年度、すなわち2023年分の所得からの変更を説明しています。現在の申告を考える際は、その年分の国税庁の案内と住所地の税窓口で確認してください。

「住民税だけ申告不要にすれば国保へ影響しない」という旧制度の手順を、そのまま実行しないことがポイントです。

相談前に、年間取引報告書と「何をしたいか」をそろえる

税務署等へは税の取扱い、市区町村へは国保等の影響、健康保険の保険者へは扶養認定を、それぞれ確認します。

手元に置くのは、証券会社ごとの年間取引報告書、繰り越している損失があれば前回の申告控え、ほかの所得が分かる資料です。「別の証券会社の損と相殺したい」「前年の損失を使いたい」など、目的を一つずつ伝えます。

確定申告が必要な別の理由がある場合も、源泉徴収口座の所得をどこまで申告するかは別に確認します。迷ったまま還付だけを求めて入力するより、申告しない選択と申告する選択が自分の家計へどう影響するかを確かめてから進めましょう。

この記事の登場人物

美緒のイラスト

美緒29歳

住まいや固定費を見直し、自分の暮らしに合う家計を考える。

次に確認したいこと

「NISAのリスクと設定」の記事を探す

← 貯蓄・投資の記事一覧へ